この文章は、2006年6月23日に私が他のブログに記載したものを転載しています。
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
ワールドカップサッカーの日本対ブラジル戦が1対4の大差で日本の敗北に終わった。これで日本は1次リーグ敗退が決まった。グループFの全試合が終わった今となって振り返ると、初戦のオーストラリア戦の負けが悔やまれる。もしオーストラリア戦が当初の目論見通り日本の勝利であれば、日本がグループF2位で決勝トーナメント進出となっていたそうである。
スポーツの試合で負けてしまったときに、「持ち味が発揮できていなかった」とか、「自分たちの力が出せていなかった」とか言う解説者がいるが、私は持ち味・力が発揮できないのは負けの原因ではなく結果だと思う。対戦相手は当然こちらの研究をしていて、こちらの持ち味が発揮されないように手を打ってくる。相手に手を打たれたからこちらは持ち味・力が発揮できなかったのだ。こちらの持てるものすべてを発揮して、それでも負けたと言うなら、それははじめから実力の差がありすぎて、こちらの持てる力すべてを出しても全く歯が立たない相手だったと言うことに過ぎない。世界ランクが下位のオーストラリアにどうして日本は勝てなかったのだろうか。実力が発揮できなかった原因はどこにあるのだろうか。
負けた原因を探ってひとつひとつのプレーを分析していくと最後はひとりひとりの技術力の低さに行き着く場合が多い。1対1で相手に勝てないから全体でも勝てないってことに行き着いてしまう。でもちょっと待ってほしい。1対1で勝てるかどうかは、試合の前にすでにある程度見えていることだと思う。「○○選手は背が高くて高い位置のボールの競り合いでは強いから要注意だ」、「△△選手は脚が速くてドリブルがうまいから自陣に食い込まれてしまう」など、ある程度事前に見えていることだと思う。
日本代表は日本全国の中から技術的に優秀な選手を集めるのは当然で、今の日本代表はそういう意味で現時点の最高の選手がそろっていると思う。それでも対戦相手と技術的な差はあるのである。最高の選手を集めても外国選手との技術的な能力差はある。その能力差を前提にして、それでも戦って勝ちを収められるような戦略をどうやって組み立てるか。これが一番大事だと思う。
オーストラリアの監督であるヒディンクは前々回のワールドカップでオランダをベスト4へ、前回のワールドカップでは韓国をベスト4へ、そして今回はオーストラリアを32年ぶりのワールドカップ出場そして初の決勝トーナメントへと導いた。監督がヒディンクに変わったことでこれら3カ国の選手の技術力が短期間に大きく向上したとは思えない。もちろん選手のポテンシャルも高かったかも知れないが、一番大きな要因はヒディンクが戦略をきちんと考えたことにあるのではないかと推測している。実力(技術力)で格上の相手と戦って勝利を収めるには優れた戦略が必要である。
今回の日本に足りなかったのは選手ひとりひとりの技術ではなく指揮官の戦略であると思う。技術的に劣っていても少しくらい格上のレベルであれば戦略で覆すことができる。ヒディンクはそれをやってきた。一方日本は格下の相手に負けてしまったのである。今回の日本の予選リーグ敗退は不十分な戦略が原因だと思う。